Record #03-2 -- oxford record -- [ PREV ] [ NEXT ]




Record Details


くるり 学(まなぶ)の 牛津録
Record #: 03-2

Title: 「ジョン・マッキンジーの晩餐」(二)

Issued on: 2001年1月20日
Last modified: 2001年1月26日

メルマガで発行したモノを、加筆修正して、随時ここにアップしていきます。



your picture here
◎編集後記

 どうも、発行人のくるり学(まなぶ)です。今回の話、いかがだったでしょうか。

 タイトルにあるジョン、ついに登場しました。モデルになってる僕の友達は、本当におっとりしたナイスな奴で、くるっと栗色の髪が巻いているイングリッシュです。貴族でなくても、育ちのよさをついつい感じてしまいます。
 宣言通り、フォーマル・ディナーがどんな感じなのかをお伝えするため、またまた小説形式をとりました。ディテールを書き込みすぎると長くなるので適当に端折ったんですが、まだ長いですね。でも、このまま突っ切らせて頂く予定です。


■読者の方へ

 メールを下さった方々、ありがとうございます。
 ホント、人って様々ですね。色んな書き方で送ってくださるので、万華鏡でも覗いてるみたいに妙な気分です。数々のご指摘・リクエストはとても励みになりますので、これからもちょこちょこメールください。
 あ、決して女性限定じゃないですよ。男性が趣味って訳でもないですが。

 タイミングを逸してしまいましたが、何人かの方がクリスマス・プディングの話、メールしてくださって……無反応ですいません。実は、僕、あれ苦手なんです……もの凄く甘い上に癖があって、クリーム付けて誤魔化すのが精一杯で。何卒お見逃しを。

 イギリス人の男って○○だよね、とか、××なんでしょうか?…というメールも頂きました。次回、ひょっとして近い話?が出てくるかも知れません。ご期待下さい。


**さて、皆さんに 質問 があります。**
留学動機を知りたいというメールは結構頂くのですが、留学準備に関する話ってどれくらい聞きたいんでしょう?

 ゲストブック、melma!掲示板、メールのいずれでも良いです。ご要望お寄せ下さい(できれば具体的に)。メルマガ、サイトのいずれかに反映させようと思います。探せば色々留学情報サイトがあるようなんですけどね。
 掲示板
 http://members.tripod.co.uk/bin/gb?member_name=kururi(stop中) ゲスト ブック


■お知らせ

 ついにサイトに画像が登場しました!
 と言ってもロゴと小さなの一枚だけなんですが…
 小さいのは、第一録、第四録登場のハイストリートの画像です。デジカメも何もないので、あまりどんどんアップできないですが、話に出てきた場所を少しずつアップしていこうと思います。乞うご期待!
 できれば、映画「ハリー・ポッター」(未だ見てない)登場の、クライスト・チャーチ・カレッジのホールもアップしたいなぁ。


 次号は「ジョン・マッケンジーの晩餐(三)」いよいよ完結。SCR、そして○○へと、カレッジの中を潜入して行きます。来週発行の予定。お楽しみに。

 メールで質問など送って下されば、文章の中でちょこちょこ応えていこうと思ってますので、皆さんどしどしメール下さい。個別に返信できる自信は余りないです(汗)。

by Kururi
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      !!無断転載厳禁!!     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行者名:くるり 学 (kururi@lycos.co.uk)
マガジン名:英国留学 牛津録
発行周期:ほぼ隔週刊(不定期って申請したのに)
発行人サイト:http://members.tripod.co.uk/kururi/
       http://members.tripod.co.jp/kururi_m/
(C)M.Kururi, 2001-2002. All rights reserved.
このメールマガジンは『まぐまぐ』と『melma!』で発行しています。
(まぐまぐマガジンID: 0000080277)(melma!マガジンID: m00055251)





SIDENOTES

 ※2…3コース・ディナー。最も簡単、かつ一般的なコース・ディナー。前菜、 メイン・ディッシュ、デザートの三皿が給仕される。この他には、5コース ・ディナーが一般的。


 ※3…Duke of Mushroom=マッシュルーム公爵。





Body

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第三録の二   ■■■■
■■■■■■■************************■■■■

●第三録「ジョン・マッキンジーの晩餐」(二)

3 トーストとグレース
 
  ホールに入ると、一団が丁度なだれ込んで来る頃合だった。ディナー前
 のドリンクをマッキンジー・ルームで済ませて、みんな一様に、ほの赤い。

  そいつらに紛れてごそごそと入っていくと、目の前がぱっと開けて、明
 るい内装が出迎えてくれる。パイプオルガンがそびえる、教会風の内装は、
 きらびやかな一団を迎えてより一層引き立っていくようだ。 目の前には、
 いくつもの長机。8人かそこらの人が相席する、使い古された、手軽な筈
 のそのテーブルも、こういう日には美しく歴史を感じさせてくれる。燭台
 が並べられてキャンドルが灯り、食器やバターが照らされていて、今にも、
 美味しそうな料理が並べられそうな予感じゃないか。あー早く食べたい。
 
  ディナー・パーティと一口に言っても、形態は色々ある。
 
  単純に、一つ二つの大テーブルに料理が並べられて、皆で適当につまん
 でいく立食形式か、テーブルを挟んで、ちゃんと椅子に「お座り」して食
 べる形式か、などの違いもあれば、催し物が次々と繰り出されるタイプの
 ものか、反対に、やたら厳かに執り行われ洗礼でもされそうな勢いの、儀
 式めいた物もあったり。もちろん、時期やカレッジによるのだけど。 今
 日のようなキリスト教に関係の深い祝祭日の場合、往々にして厳かなタイ
 プの物が主流となる。それでも、人気の高いパーティの場合、前もって手
 順や席順が全て決められていたり。料理がうまいのもこの部類なんだけ
 ど……ちょっと面倒でイヤな類だ。
 
  今日のディナーもしっかりフォーマルで、ひょっとしてそういう部類か
 と思わせたのだけど、皆が友達を誘って思い思いに座って行くところを見
 ると、どうやら、席順が決まってない類のようだ。やれやれ。
 
  二〇〇人余りの参列者がぞろぞろと座って行く。すると、人垣の向こう
 側で、誰かが僕に手を振ってるのが見えた。いつもと違う服装で、一瞬分
 からない。でも、よく知っている顔なのは間違いなかった。
 
  手を振っていたのは、ジョン・マッキンジーという奴で、大学院入学が
 同期の、おっとり型の好青年だ。いつになく人懐こそうに寄って来る。 
 ジョンがマッキンジー・ルームから出てくるなんて、「ちょっと洒落てる
 ね」と軽くおちょくってみたら、すぐさま「確かにこのカレッジと比べた
 らね。あそこを僕の部屋にしてくれないんだもの、僕より洒落てないよ」
 とウインク。 こういう風に、イギリス人は、珠に僕を口説いてくる。女
 の子だったら絶対すぐに勘違いする。「あそこを君の部屋にしたら、毎日
 花火でも上がってる様にうるさくなるだろ?」なんて言いながら、早速、
 僕らは席に着いた。
 
  ところで、席が自由なのはいいんだけど、相席する人で、よくも悪くも
 なるのがこのタイプの難しい所だ。下手をすると、上の会話に輪をかけた
 ような、歯の浮く会話のオンパレードになるかも知れないし、やたら社会
 情勢を並べ立てたり、近くの女の子を口説きまくるやつに囲まれたりして
 も、ちょとつらい。 でも今回はジョンがいる。気軽に話せる相手と一緒
 に座ることが出来て、とにかくよかった。おいしい御飯は最低限おいしく
 食べたい。そう、食べたい。早く。
 
  テーブルの上には、食器とバターのほかに何も食べ物が乗っていなくて、
 前菜用の白ワインとメイン・コース用の赤ワイン、それからデザート時の
 ポート・ワイン用に三つ、グラスが大きく口を開けて待っている。食べ物
 はまだ来ないのか。と、席に着いたばかりでムチャな要求を口にしてみる。
 テーブルを見回すと、その他には簡単なメニュー(と言っても選べる訳じゃ
 なくて、料理の名前が書いてあるだけの簡素な物)と、何やら見慣れない
 紙片が置いてある。一見するとメニューっぽく見えるのだが、古英語らし
 きものとラテン語で書かれた詩篇の上に……よく分からない単語の組み合
 わせ。

  トーストとグレース?

  はてな。何だこりゃ?
 
  3コース・ディナー(※2)にトーストなんて出てくるはずないし、グ
 レースは食べ物じゃなさそうだ。その後の文言から察すると、これを詠唱
 するのかな……ってそう言えば「食前のお祈り」のことをグレースって言
 うんじゃないか。 でも、「トーストと食前のお祈り」じゃ何のことだか。
 まさかトースト齧りながら

「かみしゃまほとけしゃま、ほにゃほにゃもぐもぐ」

 なんて訳には行かないだろうに。そう言えばトーストって、「美人」って
 意味もあったかな。「美人とお祈り」うんイケる。 そうボケ続けている
 と、誰かがトーストのことを話してくれていた。トースト=祝杯。

  そう言えばそうだね。ありがとうジョン。

   お祈りの文句は、……紙片を持ち帰らなかったので忘れた。ジョンの隣
 りのおデブさんが翻訳してくれてたけど、偉そうにウンチクヲタレテイル
 上に、遠くて聞こえにくかったので、あまり聞き取れなかったのだった。
 ただでさえ、トーストに塗りたくるバターのように、ベタベタで遠慮のな
 いアメリカ英語は、耳障りで、シャクに触るのに、もって回った表現され
 たら、気分もグレーっす! ダジャレの方がまだマシだ。早く食わせろー。
 
  白ワインが注がれ、前菜が並べられ、いよいよとなって、詠唱が始まっ
 た。カレッジ長が、“素晴らしい”らしい発音でラテン語らしき物を詠唱
 し、それに応える様に、その他大勢が次の行を詠唱する。それが一回、二
 回、三回、……だから、早く、食わせろ! 目の前には、上品に美味しそ
 うな「アスパラガスとXXの○○ソース和え」が、サーヴされた白ワイン
 と共に僕を待ってるのに。

  アーメン!
 
  お祈りの時間は終わった。
 
 
4 聖キャサリン晩餐会
 
  素敵な笑みを浮かべるお姉さん給仕にサーヴされて、これまた素敵な料
 理が繰り出されて来る。思わずこちらもニンマリ。 普段のイギリス飯と
 言ったら、★××▼↓◆といった感じで筆舌に尽くしがたいから、待ちに
 待った料理なのである。ああ、自分で料理しなくても旨いものが食えるっ
 て幸せだ。 べちゃべちゃの茹で野菜達や、ゴテゴテの肉の塊(脂と塩味
 のみ)達とは暫しのお別れ。ケバブやチップスは夜までオアズケ。今日は
 フレンチばりの料理の筈。食いまくるぞ!(量が決まっていると言う事実
 は、この際わすれる)
 
  ここで、今日のコースを説明していこう。前述した通り、前菜は
 
     アスパラガスとXXの○○ソース和え
 
 白ワインと、焼きたてのフランスパンも共にサーヴされる。××は軽くキャ
 ラメルでコートされた薄味の煎餅っぽい物で、魚から作られたものらしい。
 ○○ソースは、やや酸っぱ目のすっきりとした半透明ソース。何とも上品
 だ。何より旨い。
 
 
  それから、メインが、
 
     野生のマッシュルーム製ベッドの上の鞍部分のラム肉と    
     ぼろぼろ蓋付きロースト・キュウリと
     シャトー・ポテトと   
     旬の野菜
 
 濃い目の赤ワインと共にサーヴ。脂のたっぷり乗ったラム肉にぴったりの、
 濃く、やや癖のある赤ワイン。これがまた美味い。ほどよく混ざったタン
 ニン(苦み)が、ラムの脂を際立たせる。
 
  それから、マッシュルーム。
 
  日本だと6個か7個で三〇〇円するようなマッシュルームは、こちらで
 は、手づかみで一〇〇円未満。そんなスーパーで叩き売りされている物で
 すら、日本の市販品より旨いのに、それら量販品とは一線を画する、位で
 言ったら公爵様級のマッシュルームが、ベッドを作って待ってるのだ。の
 だ。のだ。脂の乗ったラム肉が旨いのは、まあ当たり前として、その下に、
 その脂と濃厚ソースの掛かった、それに負けないくらい濃厚な味の『デュー
 ク・オブ・マッシュルーム(※3)』が、トロケルように待っていたとし
 たらどうするよ。
 
  ぼろぼろ蓋付きロースト・キュウリ。もろみ風の物が切り口を覆う巨大
 キュウリの切れ端。噛むとやけにジューシーで、もろみの風味と味わいが、
 脂の中にアクセントを付けてくれる。侮れない一品。
 
  それに定番のシャトー・ポテトと旬の野菜。 最後のデザートの前に、
 極甘のポート・ワインが赤ん坊の掌のようなグラスに注がれ、これまた贅
 沢な匂いを漂わせる。
 
 
  そしてデザートが、
 
     チョコレート・ケーキのコーヒーソースがけ
 
 もう甘いのなんの。遅れて出てきた淹れ立ての濃いコーヒーが、この甘さ
 と一緒にジェット・コースターの最後を飾ってくれる。
 
 
  そのジェット・コースターが最後の山に差し掛かる少し手前。ポート・
 ワインを注ぎ終わった頃。突然、周囲が静かになって、おもむろに、ハイ・
 テーブルに鎮座していたカレッジ長が立ち上がった。 カレッジ長のお話
 が始まるのだ。もちろん、聖キャサリンの話である。 欧州の古い伝承や、
 中世の教会のあり方、また、それにまつわるこのカレッジの話を、面白お
 かしく冗談を交えて話していく。 学生の頃は、キャサリンと言う女の子
 を追い回したもんだとか、強気な女性を見ると名前を聞いてみたくなるだ
 とか。マッキンジー・ルームに、実は昔、聖キャサリンの像が置かれてい
 て、キャサリンズ・ルームと呼ばれていた。とか。 そうしたキャサリン
 ズ・ブームも今は消え去って、こうして祝日に名前を残すのみ。伝説の女
 性といえど、歴史の中に消えて行くだけなんだろうかってね。 楽しそう
 に話をするカレッジ長も、既に半分出来上がって、いいおじさん加減を醸
 し出している。いや、もうお爺さんだ。飲みすぎて倒れたりしないでよ。
 
 
    **   **   
 
 
  演説が終わってディナーも終わって、最後に出されたコーヒーも飲み干
 す頃、皆がぞろぞろとハイ・テーブルの方に消えていった。ジョンに聞く
 と、今日はSCRを開放してくれるらしいんだとか。そこで酒が飲めるら
 しいんだとか。
  え? SCRで? 耳を疑った。
 
 「SCRって、シニアー・コモン・ルーム……」と僕が囁く。
  ジョンは「そう、教授たちだけのブルジョワな部屋さ」と事も無げ。

 「あの特権階級用の?」
 「オックスフォードだからね」
 「入ったことある?」
 「もちろん無いよ。君は?」
 「NO WAY」と僕は力強く返した。

  一瞬、ジョンの瞳が悪戯っ子風に輝いた気がする。それは僕の方だった
 かも知れない……。

 「行く?」

 「行こっか?」
 
 
 (つづく)
 
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




LINKS